よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

ふぐひとすじ~秘密の名店

 私のブログ『ジロー物語』ではこれまで、各地の美味しい店について何度か書いてきました。今回は、これまで書かずにおいた、とっておきの名店について記したいと思います。和歌山市畑屋敷葛屋丁にある『割烹花道』。秋・冬のふぐ、春の桜鯛、夏の鱧と四季折々の味を提供してくれる店ですが、名物はなんといってもふぐ。この店のふぐ料理と私が出会ったのは、店がオープンして間もない頃、私が21歳だった頃に遡ります。
 大将の「みっちゃん(花道種八さん)」が29歳で独立し、奥さんと店を開いてすぐの頃、私は初めて店の暖簾をくぐりました。席に着くなり、大将は3kgほどある大物のとらふぐをまな板に載せたかと思うと、出刃包丁でバン、ドン!辺りに血しぶきが飛び散り、そのうちいくつかは私の白いカッターシャツに。「ああゴメン、クリーニング代は支払います。」なんとも豪快で強烈なファーストインプレッションでした。みっちゃんの料理はまさに命懸け。大胆過ぎる所作に最初は圧倒されたものですが、出てくる料理の味は繊細そのもの。舌が肥えていない私が食べてもこれは絶品と分かるポン酢漬けの鉄皮に始まり、今だにここ以上の店にはお目にかかっていないふぐ刺し。その後も唐揚げ、鍋、〆の雑炊とうまい料理が続き、ヒレ酒との相性も抜群。以来、ことあるごとに訪ねるようになりました。
 そうこうして通ううち、ある日、店の隅のみかん箱!に入れられ泣きじゃくる赤ちゃんと対面。聞けば大将の長男で、誰あろう、現在の2代目大将でした。
 時は移り、2代目が親父譲りの包丁技で魅せるようになってからも、私のベストワンは花道。出張先でふぐをいただいたり、ご馳走したりする機会は多々ありますが、そのお相手が和歌山に来られると、みな「ここのふぐには敵いません。」と白旗を挙げて帰られます。「同じふぐならどこも味は変わらないのでは?」と訝る向きもあるかもしれませんが、格の違いを生み出しているのは包丁技とポン酢だと私は思っています。ちなみにここのポン酢は本当に格別で、共に店を訪ねた旧友にせがまれ、海外まで空輸で届けたこともあるほど。百聞は一見(一食?)に如かず。こればかりは味わった人にしか分かりません。
 私から見て2代目がすごいと思うのは、秘伝の味であるポン酢など先代の良い点をしっかり受け継ぐとともに、唐揚げを筆頭に昔とは全く違うアプローチで完成させた2代目ならではの味も追求しているところです。親子の味のハイブリッドともいうべき今の姿はもはや完成の域に達していると思われますが、その斜め上を行くさらなる飛躍があるのではないかと密かに期待しています。

2代目大将の典公さん、そして奥さんとのスナップ。