よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

木材が買えない!

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 先日来、旧知のお二人から相次いで電話がありました。どちらも急ぎの木材が手に入らず困っているとの由。そこで早速、当社の在庫を調べてみましたが一部足りない物もある模様。実は国内の木材市場の需給は逼迫しており、当社含め木材業界全体が品不足に悩んでいるのです。とはいえ、困ったときはお互い様。当社の担当者もそのことは心得ていて、私が催促するまでもなく、取引先に融通を頼むなどして、このSOSに対する最適解を導いてくれました。
 そもそも今回の木材不足については、当社の仕入れ担当者も1年ほど前からその不安を口にしていました。理由として彼は、米国での堅調な住宅着工とコロナ禍が重なり木材の生産が追い付かないことや欧州材の輸出が船便から大陸横断鉄道利用にシフトしていること、日本の市場が低価格を求める一方で建築基準法が定める品質基準は非常に厳しいことなどを挙げていました。すると今度はスエズ運河での貨物船座礁と原油高のダブルパンチです。5月の木材輸入は例年の80%前後に落ち込んでいます。さらにこの分だと6月も輸入量は減り、夏場はさらに例年の半分程度まで落ち込むのではないかという声が専ら。
 さてどうしたものか。しかし、私は秋口には市況が何事もなかったかのように元通りになるとみています。その根拠は私の苦い経験にあります。
 第一次オイルショック直前の昭和46年(1971)、米国の大型港湾でストライキが続き、当時のニクソン大統領がタフト・ハートレー法を発動して労使紛争の解決にあたる事態に発展しました。この影響で木材価格は1ヶ月ほどで約2倍に暴騰。最初こそ当社に大きな利益をもたらしましたが、相場はその後値下がり一本筋。結局、トータルすれば大きな損失を被ることになりました。そう、価格が上がればどこからともなく供給が増え、需給のバランスが取れる。まさにアダム・スミスの言う「神の見えざる手」です。
 この経験が私に教えてくれたのは、大きなうねりに溺れてはいけないということ。加熱する相場に乗じて儲けてやろうと考えた者は結局、大損をするということです。最初に書いたSOSの件、当社の担当者が相手先に出した見積書を見てみると、当社在庫については平常時の価格、取引先に融通してもらった分は現在の市場価格並みになっていました。これなら溺れずにやっていける・・・。当社もこのあとしばらくは苦しい時期が続きそうですが、その後の反転を確信するに十分な瞬間でした。

 よろずやジロー、きょうのひとこと。
 山より大きな猪は出ぬ。
 努力の先に成果あり。