よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

今も辿り着けないゴール

 その昔、社長になったら会社を5倍の規模にしてやろうと意気込んでいました。ところが実際に社長になってみると、何から手を付ければいいのか全く分かりません。そればかりか自分が周囲からどう見られているのかが気になってしまい、主体的な判断が取れない時期が続きました。
 そんなとき「不言実行」こそ正しい道だと説く書物に出会いました。しかし私は「いや、違う。今の自分には有言実行こそが大切だ」と直感しました。思えば、これがターニングポイント。精神的に吹っ切れた私は、社長として会社のあるべき姿をいちから考え直し、出てきた課題の克服をそれこそ社内外に有言実行するようになったのです。
 こうした取組みを5年近く続け、自分がやっと“経営者”になれたかなと感じたのは昭和60年頃のことでした。会社の歴史を振り返るなかで、社の社会的役割を実感し、その後の経営理念を構築することができたのが最大の理由でしょうか。また、事業の方向性に自信が持てるようになりましたし、その事業を進めるうえでの働き方を社員に示すことができるようにもなっていました。さらに経営資源を有効活用するための役割分担が進んだことも自信につながった気がします。
 ただ、70歳を過ぎ、今も学ぶことが多いと実感している私から見れば、当時の私が経営者としての完成型ではなかったことは明らかです。そもそも社会自体が日々大きく変化し、そのスピードもより速くなっている現代社会において、経営者のあるべき姿を一義的に説明できるはずがないのです。実のところ、そんな簡単なことに気付いたのも還暦を過ぎてから。なんともお恥ずかしい限りですが、そうやってもがき続けるのも経営者の務めなのかもしれません。
 
 よろずやジロー、きょうのひとこと。
 正解に辿り着くまでの時間をかけるべきか、かけざるべきか。
 その答を探るのにも、また時間がかかる。