よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

きんちゃんと渋沢栄一と

f:id:yorozuyajiro:20201017225238j:plain

まさに帝国ホテルの生き字引。靴磨きのきんちゃん。

 帝国ホテル地下1階で50年以上シューシャイナー(=靴磨き)を続けているきんちゃん。私もかれこれ30年あまり、東京出張の際に靴を磨いてもらっています。その日、お店にはちょうどお客が誰もいなくて。これはきんちゃん絶口調の予感です。「今日は、きんちゃんがここで働き出したきっかけでも聞いてみるか」そう思い、話を振ると「取締役だった頃の犬丸一郎さんにスカウトされたんですよ。犬丸さんは宮本さんもよくご存知でしょう。」ご存知もなにも犬丸氏は帝国ホテルの元社長。その弟・二郎氏はホテルB1の中華料理『北京』を経営されていて、よく食べに行ったものです。「よそで靴磨きをしていたとき、犬丸さんが来られてうちで働いてくれないかってね。一度仕事場においでってことで伺うと、ライト館のお客様の3割、300人が毎日靴磨きに出すと聞かされて、こちらで働くことにしたんですよ。」ライト館は今の本館が建つ前の建物。フランク・ロイド・ライト設計による重厚な造りが特徴でした。現在の本館自体が東京五輪が開かれた1964年の完成ですから、その前から働いているきんちゃんはまさしく帝国ホテルの生き字引。たんなるおしゃべり(失礼)ではないのです。
 帝国ホテルに来てからのエピソードを聞いているうち、時間はやはりオーバー。さてお勘定というとき「もうすぐ支払うお札が渋沢栄一になりますね。」と振ったが最後、もう一くだり二くだり、話が続いたのはいうまでもありません。
 さて、この渋沢栄一は帝国ホテルの初代会長。近代日本資本主義の父とされ、新一万円札の顔になる人物です。帝国ホテルの社員に対して彼が訓示したことばを今回はご紹介しておきたいと思います。
 「いろいろの風俗習慣の、いろいろの国のお客を送迎することは、大変に御苦労なことである。しかし、君たちが丁寧に尽くしてくれれば、世界中から集まり、世界の隅々に帰っていく人たちに、日本を忘れずに帰らせ、一生日本を懐かしく思い出させることのできる、国家のためにも非常に大切な仕事である。精進してやってくださいよ。」

 よろずやジロー、きょうのひとこと。
 良き友、きんちゃん。
 きんちゃんのサービス精神には、渋沢栄一の訓示と同じ心が流れているよ。