よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

長いお付き合い

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『兼定』を切り盛りする中村兄弟。

 美味しい料理店、素晴らしいお店は世に数多くあります。それでも、自然と足が向いてしまう、長く通い続けているお店となると、ごく限られた数になるのはなぜだろう。先日、六本木の寿司店『兼定』さんを久しぶりに訪ねた際、そんなことを少し考えました。ここのご主人、中村三男さんは青森県上北郡野辺地町の出身。弟さんとともに上京して修行を積み、今は兄弟で店を切り盛りされています。その兄弟喧嘩(失礼)を聞きながら、日本一旨いと信じて疑わない寿司をつまむのが、私の至上の愉しみのひとつ。その日もいつも通り、大将ととりとめもない話をしながら食事をしていたのですが、途中、あじの押し寿司が出てきたとき「そうか」と思わず膝を打ちました。食べたいものが食べたいタイミングで、食べたい風味を伴って、いつも供されてくるのです。それはこちらの好みを熟知しているということだけでは説明しきれない、阿吽の呼吸とでもいうべきサービス。自分はこれを求めて通っているんだと強く感じました。
 思い浮かべてみると、同じ感覚を抱く店が他にも2軒あります。ひとつは帝国ホテル『なだ万』。ここの天ぷらコーナーは通い始めてもう30年余り。今の親方、小泉孝治さんの出す料理に惚れ込むとともに相性の良さを感じています。もうひとつは仙台の『福寿司』。少し話が長くなりますが、赤坂にかつてあった名店『しる芳』を訪ねた際、福寿司という仙台の老舗の息子さんがうちで修行しているとの話を聞きました。その後しばらくして当社が仙台に工場を建てることになり、空港に降り立つとお店の看板をロビーで発見。これは何かの縁と訪ねてみれば、東京の超一流店に勝るとも劣らない店構えで驚きました。以来30年あまり、三陸の海の幸と絶品の穴子のツメ、そして同年代の現親方が醸し出すプラスαの魅力を求めて通っています。 
 さて最後にもう一店。こちらは料理は出てきませんが超一流、帝国ホテルの靴磨きコーナーです。名物店主の“きんちゃん”は、この道うん十年。高倉健、鶴田浩二、嵐寛十郎ら多くの有名人が通ったことでも知られるレジェンドですが、腕の良さ以上に愛される理由がその茶目っ気。店が暇なときに訪ねたりしたものなら「あのときアラン・ドロンは・・・」といったエピソードが溢れ出し、通常15分ほどのサービスが30分以上になることもしばしば。実は、ついこの間、靴磨きをお願いしたときがそうでした。「ここの歴代オーナーは・・・」
 話は、実際に会ったことのあるオーナーだけでなく、帝国ホテルの初代会長・渋沢栄一の逸話にも飛び火して。次回は、そんなきんちゃんとのよもやま話の続きをご紹介します。

 よろずやジロー、きょうのひとこと。
 通い続ける店には、通いたいと思わせる人がいました。

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『なだ万』天ぷらコーナーにて。

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圧倒された『福寿司』の店構えと気の合う親方。