よろずやジロー~宮本次朗【プレカットの宮本工業グループ相談役】のブログ

プレカットの宮本工業グループ相談役、宮本次朗の一代記。人生を彩る貴重な出会い、感銘を受けた言葉を振り返りつつ、明日を語ります。

プレカット実用化へ②

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日進月歩で進化するパソコンも当時は黎明期。

 大阪の工場で見た工程は、いわばマニュファクチュア=工場制手工業でした。コンピュータで設計(CAD)し、コンピュータ制御で製造(CAM)しなければ"産業革命"は完結しません。自動車部品やプレハブの鉄骨などでは実現していたCAD/CAMがどうして木材ではできないのか。私はきっと可能だと考え、ある会社にシステム開発を依頼し、千葉工場にラインを新設しました。
 そしていよいよ操業開始となったとき、どうして他社がこのやり方に手を付けなかったかが分かりました。伸縮・歪み・反りといった木の特性に対し当社のシステムは無力で、大工の職人技とは雲泥の差があったのです。「これではだめだ。」慌てて部下に指示し、他のソフト業者にあたらせましたが、どこも二の足を踏んで仕事を引き受けてくれません。そこで私は機械メーカーの紹介を受け、自動車車体のCAD/CAMを開発している会社にシステム開発を依頼することにしました。とはいえ、相手はT自動車が得意先という大きな会社。依頼を引き受けてくれる保証はありません。ラインが開店休業状態に陥り、資金もひっ迫していた当社にとって、これは伸るか反るかの大勝負。私は藁にもすがる思いで、愛知県にある会社の門を叩きました。
 アポを取り付けていたのはシステム開発の担当者。早速、依頼内容を話したのですが、案の定「木相手の仕事は無理。」とバッサリ切り捨てられ、仕事場に戻られてしまいました。ならばと、受付で社長との面会を申し出ましたが不在とのこと。これは万事休すか。しかし、ここで帰るわけにはいきません。私はフロアをしばし見渡し、製図版に向かう約50人のうちの一人に目を留めました。そして受付の方に「あのお方と話がしたいんです。」と、本人にも聞こえるよう大きな声で頼みました。それから何分ぐらい経ったでしょうか。電話の応対などが一段落した、その男性が私の方に近づいてきました。「何のご用でしょう。」
 声の主は、不在だったはずの社長でした。

 よろずやジロー、きょうのひとこと。
 ここが人生の大一番。